助けてもらった恩は決して忘れない。台風15号がもたらした被害と絆。

豆知識

昨年、千葉県南西部に甚大な被害をもたらした台風15号。

災害から1年以上経過した今、応急処置として使っていたブルーシートのその後に注目が集まっています。

善意のブルーシート

台風15号は千葉県内10か所で観測史上トップの瞬間最大風速を記録し、8万件を超える住宅に被害をもたらしました。

中でも被害が大きかったのが県南部に位置する鋸南町。

強風で屋根が飛ばされた家が多く、台風が去った後はブルーシートで屋根を覆った住宅が目立ちました。

実はこのブルーシート、全国の方の善意により届けられたものでした。

発したSOSに応じたたくさんの人達

台風が去ると同時に、隣町である南房総市の建築会社には屋根の修理を依頼する電話が1日に100件以上かかってきました。

しかし、あまりの依頼の多さに屋根を修理するための材料が足りずに直したくても直せない。

そこで建築会社の方がSNSで「屋根修理のための材料が足りない」とSOSを発したところ、その日のうちに全国から次々と物資が届くように…。

その投稿がどんどん拡散され、ブルーシートだけで1000枚も寄せられたそうです。

送ってくださった方のほとんどは、発信者とは面識のない方からでした。

役目を終えたシートを新たなものに

あの台風から1年以上がたち被害を受けた屋根がどんどんきれいに直っていく中で、応急処置として使われていたブルーシートは次々とその役目を終えています。

これらのブルーシートを処分するためにはお金を払って引き取ってもらうか、細かく裁断してゴミに出すかしかありません。

でも、SOSに応じてくれた全国の皆さんの善意のこもったブルーシートを役目が終わったからと言って簡単に捨てる気にはなれない。

「ブルーシートをどうしたらいいのか」

SOSを発信した建設業の方が使い道を考えていた時に、同じ南房総市に住むデザイナーさんと知り合う機会があり、ブルーシートをバッグに生まれ変わらせて再利用することを決めたそうです。


参照:https://www.nhk.or.jp/shutoken/shutobo/20201021.html

バッグは千葉県の地図が描かれた布と合わさっていて、地元の方の手によって縫製されているそうです。

助けてくださった方々の温情を決して忘れない。

そんな思いがたくさんバッグに詰められているように思います。

詳細はこちら→台風15号で被災の千葉 支援のブルーシートでバッグ作り

人が人を思うとき

台風15号が千葉県を襲っているとき、私は広島県でその中継を見ていました。

千葉県には過去に3年ほど住んだことがあり、知っている地域だったからこそ無残な光景がとても心苦しかったです。台風が去ったあとの地元民へのインタビューで「お気持ちはどうですか」などと無神経な言葉を投げかける現地リポーターには心底腹が立ったことを覚えています。

その前年、私は西日本豪雨で被害に遭っており(といっても床下浸水+家の周りが太ももあたりまで冠水、カーポートの屋根が一部飛んで行ったという軽いものでしたが…)、雨が降りやまない怖さや暴風が吹き荒れる怖さを目の当たりにしていました。

その経験から、千葉の房総地域の方の恐怖は計り知れないものだったのではないかと推測します。

台風15号で発したSOSに、見ず知らずの多くの方が支援を申し出てくれて被災地の助けとなってくれた背景には何があるのでしょうか。

緊急性・正確性が大きな反響のひとつ

想定外の被害状況です。
ブルーシート、土のう袋、ヒモ、ロープ類、材料がないことで救済できない状況に陥っています。
この投稿を見て『ブルーシート使って!』という方や屋根には上がれないが物品の寄付ならという方、どうか助けてください!


                   参照:https://www.nhk.or.jp/shutoken/shutobo/20201021.html

これらは実際にSNSに投稿された文章です。

この投稿を見て発信者とは面識のない方でもどんどん支援物資を届けてくださった。

でも見ず知らずの人がなぜ??

決め手は「助けてほしい」という言葉と、「必要としているものを具体的に示している」ということでしょう。

惨状のさなかにいる方が「助けて」と言っていることに対する緊急性、必要なものが明確にわかるという正確性は人の心を動かすのに十分だと思います。

以前、何かの災害の時に全国から届いた支援物資の中に「千羽鶴」が入っていたことが話題になりました。千羽鶴…。祈ってくれている気持ちはありがたいけれど、実際それ自体は役には立たないし、置き場所に困るし、処分するのにも困るし…。被災地に千羽鶴は大迷惑だと報道されていたことがあります。

自己満足なものを送って迷惑をかけるくらいならきちんと役に立つものを送って喜んでもらいたい、そう思うのは送る側としては当たり前の気持ちです。だから明確に「これが欲しい」と指示があるのは、双方にとって大きなメリットとだったと言えますね。

「人を助けたいから助けてほしい」が共感を生んだ

そしてこの緊急性・正確性の他に最も人の心を打ったんじゃないかと思われるのが「人を助けたいから助けてほしい」ということに対する共感の気持ちだと思います。

発信されたメッセージは「自分を助けて」ではなく「助けたい人達が大勢いるのに材料がなくて助けられないから助けてほしい」という、発信者の奥にいる大勢の助けたい人達に向いています。

発信者ご自身ももしかしたら大変な中にいるかもしれないのに、他人を助けるためにヘルプを出している。それが読んだ方の心を揺さぶるものがあったのだろうと思います。

加えて、現地に行って被災者の方々のために尽くすことはできないが物資を送ることで発信者の方が被災者を救ってくれるなら、と発信者に自己投影するような気持ちもあったのかもしれませんね。

いずれにせよ短期間で支援の輪が広がったのはとても素晴らしいことです。

そして役目を終えた支援物資を捨てることなく再利用しようと考えたことも、支援者への感謝と地元への愛情を感じます。

いつどこで起こるかわからない自然災害。

人と人との支え合いがどれほど重要でどれほど活気をくれるか、改めて感じた気がします。

おわりに

雨や地震で毎年どこかで痛ましい被害が起こっている日本。

ボランティア活動をされたり支援を行ってくださる方々を見ると、頭が下がります。

「自分には関係ないから」と他人事にせず、まずは「自分にできることはなんだろう」と考えられる人が(私を含め)一人でも多くいる世の中になってほしいなと思います。

災害は起こってほしくないけれど、災害を通じて育まれた絆も多いと聞きます。

きっかけは悲しい出来事だったかもしれませんが、できた縁は今後もずっと大切にされていくのでしょう。

「相手に共感する」。

災害の多いこの国には特に求められる力です。

 

困っている人を支えることのできる人が多い国でありますように。

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