医師も人間_______。
そんな当たり前のことを裏付けるかのような発表が、12月11日に慶応大学からされました。
やむを得ず外科手術を受けなければならない時。
しかもその手術が緊急手術で、たまたま外科医の誕生日だったとしたら。
そのような状況を想定して仮説を立てると、今まで見えてこなかった明らかな違いが見えてきました。
死亡率が増加する日とは
手術を行う時、集中して治療を施していたとしても、医師の体調や精神面、周りの環境(鳴り響くアラーム音や、耳に入る雑談、医療機器の不具合)などにより手術パフォーマンスが左右されることは少なからずあるようです。
慶応大学は「外科医の誕生日に手術をすることで、外科医の注意力が散漫になったり早く終わらそうとしてパフォーマンスが落ちるのではないか」という仮説をたて、アメリカの大規模医療データとアメリカの高齢者を対象とした診療報酬明細データを結合しながら【手術を行った外科医の誕生日と患者の術後30日死亡率の関係】を研究しました。
2011~2014年に4万7,489人の外科医によって行われた98万876件の緊急手術を分析。結果的に外科医の誕生日に手術を受けた患者と誕生日意外に手術を受けた人とでは、年齢・性別・人種・併存疾患・予測死亡率などの点ではほぼ差がないことが明らかになりました。
しかし患者の死亡率を見ると、外科医の誕生日に手術をした人は誕生日以外に手術を受けた人に比べて1.3%も死亡率が増加していたのです。
気持ちに左右されるのは医師も同じ
楽しみなイベントがある日って、何となく朝からソワソワしてしまうことってありますよね。
それはサラリーマンでも警察官でもお医者さんでも同じです。
外科医の誕生日に予想外の緊急手術。
「仕事終わりに家族でお祝いのディナーの約束をしているのに…」と、時間を気にしながら慌てて手術をすることもあるのかもしれません。
この1・3%という差は、仕事以外のイベントが気になって手術に集中できていなかった可能性があることを示す結果となりました。
今回はたまたま誕生日の日に限定していますが、これが誕生日以外の日でも注意力を持っていかれるようなイベント等が背景にあるならば、やはり手術パフォーマンスは下がるだろうと予測されています。
もちろんどんな状況であっても完璧に近いパフォーマンスをしてもらうに越したことはないのですが、それを一人の医師に負わせてしまうのではなくサポート体制を充実させることも大切だろうと思います。
慶応大学研究グループは、
「今後の研究では、本研究で明らかとなった関係がアメリカだけでなく、日本でも存在しているのかを検証することに加えて、医師のパフォーマンスを変動させる要因をさらに検証し、高い医療の質の維持するために必要な知見を明らかにする予定」
としています。
おわりに
いくら医師と言えど、誰かの夫であり、誰かの父であり、誰かの子供であり、誰かの友達であり…と、医師以外の人間と同じような繋がりは必ずあります。
「手術日がもし誕生日だったら…」と考えると若干恐ろしくもなりますが、この研究結果が示された今、高度なパフォーマンスを維持し続けられるように改善がなされていくだろうと思います。
今回の結果はアメリカでのデータを基にした解析でしたが、日本でのデータを解析した時にどのような結果が出てくるのでしょうね。
研究グループの今後の発表に注目が集まりそうです。
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